読書レビュー 『人工知能の確信』 羽生善治著

 

 

人工知能の発達の要因

近年、人工知能の躍進が注目されています。

人口知能が発達してきた大きな要因は3つあり、それぞれが作用しあっていると述べられています。

 

  1. ビックデータ
  2. ハードウェアの向上
  3. ディープラーニング

沢山のデータ(ビックデータ)を蓄積し、

1秒間で数万手の情報を処理するハードウェアが向上する、

そして、人間と同じように学習していくディープラーニングの3つが組み合わさることで人工知能は大きな進歩を遂げました。

 

「引き算の思考」の大切さ

将棋に関してだけでなく、我々の思考や判断において重要なことに、「引き算の思考」があります。

将棋を例に取ると、盤上を見た瞬間「直観的」にある程度良さそうな手を考え、その検証に時間を使う。全く論外な手は直感で排除してしまう。

このような思考の方法を人間は経験や学習によって習得していきます。

 

過去の人工知能は、直面した問題に対してすべてのパターンの計算をするしかないため、膨大な時間がかかることが弱みでした。

しかし、近年は「ポリシーネットワーク」と呼ばれる手法により、正しい答えではないかもしれないが、概算によって大まかに正解だと思われる答えを導き出し、明らかに間違いな解を除外する、という思考も人工知能は習得しています。

 

私は人工知能に勝っている人間の強みとして、経験によって、むしろ「この場面では過去の経験上こうしない方がいい」と明らかに間違っている手段を直感的に除外し、正解に近い考えに思考のリソースを費やすことができることだと考えていました。

しかし、人工知能も同じような引き算の思考法を手に入れたため、今後は人間のように直観から絞り込み、効率的に答えを導き出すことも多くなるのでないかと感じました。

 人工知能との付き合い方

よく人工知能が人間の仕事を奪う、という話があります。

人工知能が人間の知の総数を上回る特異点「シンギュラリティ」の説は有名です。

 

しかし、人工知能と人間の思考を組み合わせて、上手く付き合っていく方法もあることを著者は述べています。

 

その方法の一つとして、「セカンドオピニオン」としての人工知能の活用です。

セカンドオピニオン」とは、医療の世界の言葉で、患者が一人の医師だけではなく、別の医師から診断や治療法を聞くことを指します。

 

先程の人間の強みとして、今までの経験則から必要でない手を無意識に除外することで思考のショートカットを図ることができると述べましたが、反対に今までの経験に凝り固まった発想しかできない危険性もあります。

人工知能を使い、それまで発想をできなかった「盲点」を教えてもらうことで、そのようなリスクを低くすることが可能になります。

 

医療の世界に関わらず、思考の幅を広くする手助けをしてくれる存在として、人工知能を活用することで、イノベーションが加速する可能性もあると思われます。

 

最も重要なのは「多様性」

人工知能との付き合い方を考える際に最も重要なのは「多様性」だと考えられます。

人工知能=絶対に間違いを起こさない、と過信することは非常に危険です。

あくまで人工知能は取得しているデータ内での最適な回答をするだけだからです。

そこには「遊び」がなく、最適解のみ追求し、最適解のみ学ぶことでどんどん多様性が失われていく危険性があります。

 

自然界では、生物の個体それぞれが遺伝的に多様性を持つことが、進化のカギとなっています。

人間社会も、同じ意見の人間だけでなく、いろいろな意見を持った集団のほうが柔軟かつ強靭な場合が多いのです。

 

将棋に限らず、ビジネスや学習に関しても、「一見して上手くいかないであろう」方法を一度試してみて、経験値を身体に蓄積することが最も重要です。

人工知能を良くも悪くも過信すると、こういった経験値(=身体知)を積み重ねることが軽視されてしまいます。

 

これからの社会において、人工知能をあくまで「無数にある手段の一つ」として一人一人が付き合っていくことが非常に大切なことになります。

 

将棋をする方もしない方も、人工知能の基礎知識と付き合い方を知ることができるこちらの本をぜひご一読ください。

 

 

 

 

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